マスキングテープを使った作品展
2冊の自主制作本を発行した翌年2007年、3人の女性は、1月から6月にかけて「MT マスキングテープを使った作品展」を東京、金沢、大阪、倉敷、名古屋の5都市6会場で開催しました*1。
会場の中には、チャルカ(大阪)にように全国的に有名な雑貨店も含まれていました。
この作品展は、2冊目の自主制作本、“MTPB”とセットで企画されたもので、この本に収録された17人の作家による作品が展示されました。
(提供:いのまたせいこ氏)
また、開催に先立ち、彼女たちは「雑誌カタログ」(主婦の友社)など15誌を超える女性誌の編集部に対し、作品展のDMを送ったほか、「いろは」と呼ばれる雑誌に広告を出しています。
『「いろは」を読むような女子はマスキングテープが好きな人が多いだろう』と見込んでいたのです。
また、DMを送った雑誌のうち2誌からは取材の依頼を受けています。
作品展の会場では、前年に発行した2冊の自主制作本だけでなく、様々なメーカーのマスキングテープを2巻組でラッピングし、販売しました。
(提供:いのまたせいこ氏)
(提供:いのまたせいこ氏)
ホームセンターでの価格は、1巻50円から80円くらいでしたが、それを雑貨として1巻150円程度で販売したのです。
その目的は、大きく2つありました。1つは、販売収益を作品展の運営費などに充てるためでした。東京から各会場への交通費や、作品の会場間の移送費用などにあてがおうとしたのです。
もう1つは、雑貨アイテムとしてのマスキングテープに対する一般来場者の反応を見るためでした。
売れ行きについては、表1に示す通り、1会場あたり平均で300パッケージ(600巻)売れるほどの盛況ぶりでした。
さらに、来場者が実際にマスキングテープを使ってみることができるよう、会場内にテスティングコーナーも設けていました。
(提供:いのまたせいこ氏)
(提供:いのまたせいこ氏)
このようにして本来工業用の副資材でしかなかったマスキングテープが、実は装飾目的の雑貨アイテムという新しい可能性を持っていることが、3人の女性の活動によって世の中に示されたのです*2。
さらに彼女たちは、そうした活動と並行してマスキングテープのメーカーとの接触も試みていました。
この続きは次回。